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WOOLTILEがうまれるまで。

プロダクトの開発や企画の裏側を、関わっていただいている様々な分野の方にインタビューする“Diary”。
今回は、50cm角の肌当たりのよいタイルカーペット「WOOLTILE」を製造する堀田カーペット株式会社(以下、HDC)の代表取締役・堀田将矢さんとラグブランド「COURT」の販促企画を担当されている芳賀晋さんにインタビューしました。大阪府和泉市で60年前から五つ星ホテルや高級ブティックの敷き込みカーペットを生産する一方で、COURTやWOOLTILEというラグの自社ブランドを展開するおふたりに、カーペット製造やものづくりに対する想いを尋ねました。

大阪府和泉市にある堀田カーペット。
hdc.co.jp
堀田カーペット 代表取締役・堀田将矢さん
堀田カーペットのラグブランド「COURT」を担当する芳賀晋さん

_はじめに堀田カーペットの歴史についてお伺いしたいです。

堀田|私の祖父が1962年に創業したカーペットメーカーになります。主にウィルトンカーペット(18世紀イギリス産業革命の時代に手織りから初めて機械生産化されたもの)という種類のカーペットを生産しています。日本の歴史あるホテルのカーペットだったり、メゾンブランドのブティック、新幹線の車体の床などに採用いただいています。あともちろん住宅用も作っています。基本的には「ウール素材を使った商品以外はやらない」というのがひとつのポリシーとしてあります。ウールには天然素材ならではの美しさと耐久性があって、メンテナンスすることで「長く美しく」使い続けることに一番適していると思っているからです。

WOOLTILEを生産している和歌山の工場は、自然に囲まれたのどかな環境で生産されています。

_素敵なポリシーだと思います。その結晶が「WOOLTILE」になるんですね。
そのWOOLTILEをつくる機械が特殊だと伺ったのですが、どのような機械なのでしょうか?

堀田|WOOLTILEは、世界で私たちしか持っていない「アキスタイル」という特殊な織り機で作っています。2017年にウィルトンカーペットを作る業界で一番大きなメーカーが倒産したんです。それは業界にとって大きなショックで、ものづくりのメーカーが減るということは、全体の生産量が減ることを意味します。最悪の場合、その業界や産地がなくなってしまうかもしれないという危機感もありました。そこで堀田カーペットでそのメーカーがやってきたことを引き継ごうと思い計画を進めていたのですが、色々な事情もあってそれは叶いませんでした。 次に考えたのが、そのメーカーが開発した世界で唯一の特殊な織り機「アキスタイル」だけでもなんとか救い出せないかということでした。特殊な織り機ゆえに、同業者である私たちが引き取らないと鉄くずになってしまうような機械なんです。そんな経緯から何とか「アキスタイル」を買い取りまして、和歌山にもっている工場に移し、同時に倒産したメーカーから職人さんも連れてきました。当時は「業界と産地を何とか残していく」ということが使命のように動いていましたね。

ただですね、このアキスタイルを買ったところまでは良かったんですが、当然生産のオーダーは一つもない状態です。でも動かさないと機械は錆びていくし、技術も磨かれない。そこで「どうしたいか」ということに要素を絞って考えたのが「貴重な織り機をとにかく稼働し続けられるもの」、「カーペットにDIYを掛け合わせる」、「自社ECでお客様に届けやすいアイテム」の3点でした。そんな背景から、やっと「WOOLTILE」というブランドが形作られました。

世界で堀田カーペットにしかない織り機「アキスタイル」

_様々な事情と想いが交差してWOOLTILEができあがったのですね。ちょっと感動しました。
アキスタイルを使ったものづくりは、ウィルトンカーペットとは違う方法で作られているそうですが、どのようにできあがっていくのですか?

堀田|アキスタイルは手刺しの機械で、より正確にお伝えするとボンデットという田植えのような接着方法で作っています。これはとても生産性が悪いんです。一般的なタイルカーペットだと、うちが持っている機械で一日一台で約30〜40㎡作れます。アキスタイルはというと、1日で10㎡くらいしか作れないんです(笑)。どう作っているかというと、アキスタイルは50×50cmのタイルカーペットを、1枚ずつバラバラに作っているんです。

_ええぇぇぇーーーー!!!(驚愕)
なるほど。。だからあれだけ細かくて緻密な線が表現できるんですね。

堀田|そう、そうなんです!アキスタイルの特徴は、ほぼ狂いなく柄がつながることが強みの一つです。PUZZLEのように均一な間隔でラインが入っているものは、1枚ずつ作っているからこそ、線がずれずに50cm角の中で成立させられるんです。WOOLTILEで一番初めの商品として、PUZZLEという商品を作った理由は、一番アキスタイルとしての強みを活かせるからだったんです。この柄は世界で私たちしか作れないと思います。他の機械だと絶対ずれるんです。通常のタイルカーペットは長いロールカーペットを作った後にカットするので、1㎜単位の精度では作れないんですね。だから多少のずれても問題ないようなデザインにしたり無地にしたり。もし柄を入れる場合はどう組み合わせても、ズレが気にならないようなデザインが多いはずですよ。

WOOLTILE「PUZZLE」

_PUZZLEの柄は製造の特徴を活かしたデザインだったんですね。
一般的にタイル型のカーペットというとナイロンやアクリルがよくありますが、ウールで作っているものは見たことがないように思います。ウールで作れるのは堀田カーペットさんだけなのでしょうか

堀田|おそらく他社さんでも作ろうと思えば作れますが、たぶん誰も作らないです(笑)。なぜかというと、まず原材料が高いです。そうすると1枚当たりの価格が高くなって、タイルカーペットという製品自体を1枚で成立させるよりは、ある程度の数を使用することが前提ですので、コストパフォーマンスがあまり良くないんですね。そういったことからウールを選ぶ理由は一つもないんです。これは少し業界に対するアンチテーゼではあるんですけど、いいものを作るということよりも、どう売り上げを作るかという視点で作られるものが多くなったなと感じます。
でもウール素材は毛を刈り取って、生えてくるものをまた使うので、こんなにサステナブルな素材はないと私は思っているんですね。けれど世の中では何となく“リサイクル”が一番いいものという風になっている。私は本質的な良さをちゃんと考えられるものづくりをしていきたくて、そこを疎かにするのはメーカーとして恥ずかしいことだと思っています。まぁそれは従業員30名規模のうちだから言えることだと思うんですけどね。

芳賀|あとウール素材だと性質上かなり飛び散る毛の量が多くなってしまうので、設備のトラブルが頻発するんですね。そうすると機械が止まってしまい、本来量産したいナイロンやポリエステルのものが作れなくなる。そういったこともあってウールでタイルカーペットは生産したがるところはなくて、結果的にうちくらいしか作っていないのかな(笑)。



_「長く美しく」を大切にされている堀田カーペットさんだからこその製品なんですね。
デザインのお話しに戻りますが、LINESのデザインはデンマークのデザインユニット「all the way to paris」が手掛けられていますが、どういった経緯で協業されたのでしょうか。

堀田|LINESは、「TOKYO CRAFTROOM」という日本各地の土地に根ざした手工芸を活かしながらホテルづくりをするプロジェクトからお声がけをいただいたことが始まりです。そのプロジェクトは「作ったものは商品化すること」が条件でした。WOOLTILEでPUZZLEを作ろうとしていたタイミングだったので、この商品で参加したいということでお話をしました。そこで紹介されたのがall the way to parisでした。いくつかデザイン案が送られてきて、いろいろ試作もしながら、最終的にあの柄に決まりました。

WOOLTILE「LINES」

_手書きの線のようなデザインがポップにも使えて素敵ですよね。PUZZLEとLINESで踏み心地と糸の長さが僅かですが違うと思うのですが、あえてなのでしょうか

堀田|カーペットの良さは、素材と密度で決まります。PUZZLEはホテルの客室くらいまでの耐久性です。LINESは、宴会場で使われても問題ないくらいより耐久性のある密度にしています。安くない商品ですし、長く使っていただきたいのが根本にあるので、基本的に密度はできるだけ高めたいと思っています。PUZZLEでやりきれなかったことを、LINESで表現したという感じですね。でも実のところ本当は高さも合わせたいのですが、僅かに糸を長くして高さを出してあげないと、生産上どうしても綺麗に仕上がらないんです。


_PUZZLE、LINESそれぞれに適したバランスがあるんですね。WOOLTILEは自分でカットして自由な形で使えるのも魅力ですよね

堀田|そうですね。自分で切れるというのもすごく重要な要素にしています。あとは単に自分で施工できるだけだとDIY感は演出しにくいかと思っていたので、HDCオンラインサイトでシュミレーションできるコンテンツを作成しています。WEB上で床をデザインすることで、DIYの感覚が生まれるんじゃないかというのが私の仮説でしたが、結果的に「分かりやすい」「たのしい」というお声をいただきましたので、作成してよかったと思っています。猫も配置できるようになっていて(笑)これを作った理由は、サイズ感をわかってもらうためなんです。そのための猫です。植物とかもいれる予定です 。

芳賀|でもこれのせいでECのコンバージョン率(WEBサイトに訪れた人の購入者率)がすごく悪いんですよ(笑) 。 まぁ楽しんでいただけているので、それでいいですけどね。暮らしの中でカーペットを考えるときに、堀田カーペットを選んでいただけるきっかけに少しでもなっていると嬉しいなと思います。

_今回はお忙しい中、お話を聞かせていただきありがとうございました。
どのようにWOOLTILEが生産されているかを知ることができて、より愛おしくなりました。
WOOLTILEを敷くことでインテリアの楽しみ方の幅がぐっと広がることを、good eighty%でもご提案していきます!



Text:Maho Nishimoto, Satsuki Kido

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