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Centが生まれるまで

プロダクトの開発や企画の裏側を、関わっていただいている様々な分野の方にインタビューする“Diary”。
今回はデザインユニットM&Tの池田美祐さんと倉島拓人さんに、good eighty%(以下、g80p)が2023年8月にリリースした陶磁器のアイテム“Cent(セント)”についてインタビューしてみました。苦労話やこだわりについて語っていただきました。それではどうぞ!

倉島さん(写真:左)と池田さん(写真:右)によるデザインユニット「M&T」。good eighty%のPerシリーズの家具もデザイン。
http://mandt.design
「Cent」はトレーとベースの2型で各3色をラインナップ

_いきなりなんですが“Cent”が好きすぎて、早くも3つ大人買いしました(笑)。そんな1ファンとしての目線も交えながらお話しを伺いたいのですが、まずは今回Centをデザインするに至った経緯をお話しいただけますか?

池田 | 実はg80pがデビューしてすぐの2022年4月のタイミングで、「次の新作アイテムを開発するにあたり、g80pのメンバーと一緒にブレスト会(アイデア出し)に出席してもらえませんか?」という提案をいただきました。 “どんなアイテムがあったら暮らしがより楽しくなるか”というテーマをもとに、アイデアを持ち寄って行ったのですが、これまでは家具が中心だったのに対して「もう少し小さなアイテム(雑貨)があったらいい」という意見が多く出ていて、それが最初の出発点ですね。

倉島 | そのブレスト会の少し後になって、「テーブル周りのアイテムに絞って開発を考えませんか?」とお話をいただきました。そこで僕たちは「テーブル周りのアイテムってどんなものがあるだろう?」と考えるところから始めました。

2022年4月に行った「ブレスト会」の様子。

_ブレスト会なつかしいですね。テーブル周りとなるとM&TさんがデザインされたPerテーブルとの相性みたいなものも意識されたんでしょうか。

池田 | この時点ではそこまで意識していませんが、製品の色を検討するタイミングでは、Perとの相性を少し意識しました。いろんな色を検討する中で、Cent単体で見た時の色の美しさも重要ですし、g80pのプロダクト全体のバランスなども大事にしています。

倉島 | 僕はPerのもつ空気感とか、雰囲気が近くて心地よいプロダクトにしたいという思いは、最初からありました。言葉で表現するの難しいんですけどね。

_なるほど。CentもPerも同じ空気を纏っている感じ、たしかに伝わってきます。先ほど話に出ていたグレーとブルーはPerとの関連性も意識してということでしたが、少しグレイッシュなテラコッタ(赤)色を採用したのは何か理由があるんですか?

池田 | あーいい質問ですね(笑)。テラコッタを採用したのは、ファッショナブルなカラーというか、空間を明るくしてくれるような色を一色入れたいなと思っていて。黄色や緑色などテラコッタ以外の色も検討したんですけど、発色が綺麗に出る色と出ない色があったのと、テラコッタの色がサンプルの時点から綺麗だったというのもありますね。あとグレー、ブルーと並んだ時の相性とかも決め手ですね。

倉島 | 普段はちょっと色で冒険しない人でも、Centくらいの大きさだから挑戦できる色ってあると思うんですよね。テラコッタは挑戦にちょうどいい色だと思っています。

_私、テラコッタも購入しました。小さいから少し強い色に挑戦してみようかなって軽い気持ちで選べました。
少し話を戻して、アイデア出しから製品が完成するまでに、約1年4カ月の時間を要したわけですが、どのあたりに時間を要したのでしょうか?

倉島|そうですね。実はCentのデザインそのものよりも、このトレーとベースというアイテムに辿り着くまでが一番時間がかかりましたね。M&Tとしてもg80pの皆さんも納得できるものを見つけるまでに、鋳物でできたステーショナリーを考えたり、紙のオーガナイザーを考えたり。模型を作ってはまた考え直してを繰り返しました。でも結果として、トレーとベースのCentに辿り着いて、時間を掛けた甲斐があったなと思います。

池田|僕が一番印象に残っているのは、素材が磁器に決まってから“形と素材との相性”、“機能性と用途”、“見た目の可愛さ”という様々な要素・要望を“形”っていうとてもシンプルな答えにまとめあげるのはけっこう苦労しました。
あとCentは西海陶器さんというメーカーさんが作ってくださっているのですが、ものすごく精度の高いモノづくりで応えてくださって。西海陶器さんだからこそできた形だと思ってます。

__たしかに形としてはシンプルだけど、その分ちょっとした歪みが目立ってしまいそうですね。

倉島 | しかもCentはスタッキングもできて、横に並べても形が合うようになっていて、全方向に細かな精度が必要で。それを焼物でやろうとするとさらに難しいんです。焼物なので焼く際に土の水分が抜けて収縮するんですが、Centトレーとベースだと大きさが違うので、収縮率も違うそうなんですね。なので焼く前は口の部分のサイズがバラバラだけど、焼き上がると同じ大きさになって綺麗に重なるようになっているんです。本当にすごい技術で、コンマ1mmの単位で調整していただき非常にクオリティ高く仕上げていただいています。

池田 | あとCentは厚みが5mm程度あるんですけど、一般的な磁器のトレーは2~3mmくらいなんですよね。この5mm厚には理由があって、小さくてもちゃんと存在感のあるものが作りたかったんです。作ってみると、想定はしていなかったですけど厚みのある口部分に釉薬が乗って丸みが出たりして、そこも気に入っています。

_パッと見ではわからないことが、小さなCentにたくさん詰まっていますね。今の話にも通じますが「Centのここを見て!」っていう推しポイントはありますか?

池田 | 今お話しした口の部分と、あとは高台(裏の脚部分)ですかね。いろんな向きでCent同士がフィットするようになっています。きっとこの高台に着目する人いないと思うんですけど、ここはこだわっています。

倉島 | 僕の推しポイントは、なんでもない形なのに重なったり連なったり、1個でも形として成立していて。機能を予知できない「形の面白さ」ですかね。実はデザインする時は、どちらかというと機能面からできた形なんですよ。でも完成形としては「雲」とか「%」みたいって話を皆さんから聞いて、いろんな見え方がするのもg80pらしさがあって良かったなと思っています。

トレーもベースも裏側には共通してC型の高台がついています。

_たしかに「どんな形?」って聞かれた時に、表現の仕方が人によって違いそうなのは面白いですね。
では最後に、Centは様々な使い方ができますが、デザインされたお二人はどのようにして使っていますか? 

倉島僕はベースをリモコンなどのインテリア的にあまり見えて欲しくないものを入れていて。この使い方、実はインスタに投稿されていたのを見て、真似させてもらってます(笑)。あとリモコンって戻し場所が決まってなかったので、その点でも重宝していますね。

池田 | それもいいよね。僕はトレーにパロサントを入れて使っています。正直に言うとこの使い方は、デザインしている時に想定していなかったんですけど、熱にも強いからこんな使い方できるんですよね。ちなみにこの使い方はg80pのイメージ写真を見て真似しました(笑)。あとお箸とかフォークなどのカトラリーを入れているイメージ写真もありましたよね?あの使い方もいいなと思いました。

三者三様、同じアイテムでも使い方がバラバラになるのがCentの面白いところ。

_ちなみに私は食器として使っていて、キムチやポテサラなどのおかずを入れるのに使っています。食卓に並んだ時のサイズも絶妙でいい感じです。三者三様な使い方でいいですよね。
1つのアイテムでこれだけ柔軟なものってなかなかないように思いますし、どうやって使おうか考えるのも楽しいアイテムだと思います。本日は、お忙しい中ありがとうございました

Text:Tomohiro Morooka

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