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森川裕太さん

good eighty%に携わっていただいている方々にフォーカスする「people」。
今回は、2023年からgood eighty%の写真を撮っていただいている写真家「森川裕太」さんにインタビューしました。
森川さんの写真家としてのルーツや、1番印象に残っているgood eighty%の写真などについて聞いてみました。

関東と関西の2拠点で活躍する写真家の森川裕太さん。いつも周りを笑顔に、、いや笑いを提供してくれます。
@morikawa_yuta

_よろしくお願いします! まずは森川さんが写真家になったきっかけがあれば教えていただけますか?

森川|実はもともとは、ずっと小学校の先生になりたいと思っていたんです。でもそれは両親が少し堅い人だったので、親を納得させるためでもあったんですね。でも大学在学中にアメリカに行ったことがきっかけで、新しい事だったり自分自身でも想像もつかない事をしたいと思うようになり、二十歳の時にヒッチハイクをしようと思い立ったんですよ。

_えー-と、冒頭から情報量が多いです(笑)。小学校の先生になりたかった青年時代を経て、クリエイティブな仕事を目指す。かと思ったら、ヒッチハイクをしたんですか?

森川|そうなんですよ(笑)。そのヒッチハイクで車に乗せてくれた方の1人が、僕の師匠になる「前康輔」さんです。この出会いで人生が変わりました。
ヒッチハイク中、僕は車に乗せてくれた方に「二十歳の僕に何かエールをください」ってお願いして、みなさん「しっかりしろよ、頑張れよ!」と言ってくれました。でも前さんだけは、僕の顔を見ながら「お前、ちゃんとするなよ」と。言われた時は正直「なんそれ?」って思っちゃったんですけど、ヒッチハイクを終えて将来の事を考え始めた時に、振り返ってみたらこれまでの人生「ちゃんとしよう」とか、周りの目を気にして生きてきたなと思えました。それを見透かして言ってくれたんかなって思った時に「カッコええな」って。そんなことを言える人がやっている職業“写真家”っていうものに興味が湧いて、どこか憧れの職業に変わったんですよね。

ヒッチハイクをしていた時に、後に師匠となる「前康輔」さんが撮った森川さん。

_なるほど。人生を変える衝撃的な写真に出会った、とかじゃなくて写真とは関係のない一言だったんですね。

森川|そうなんですよ。でも、すぐに写真家を目指したわけじゃなくて、大学を卒業して東京の広告代理店に就職したんです。そのタイミングで、僕が東京に引っ越したことをSNSで知った前さんからDMが来て、「飯行こうぜ」って誘ってくれて。後日会って、写真家としての仕事の話をいろいろ聞かせてもらっているうちに「あぁ、やっぱり前さん格好いいな。写真家っていいな」と思って、次の日に広告代理店の仕事を辞めました。
知識も機材も何もない状態で、会いに行って「今、仕事辞めてきたので、アシスタントに付かせてもらっていいですか」って。突っ走った僕を前さんは雇ってくれたんです。それが僕の写真家としての始まりです。そこからはもう知識があろうがなかろうが、自分からお願いしたアシスタントなので、僕の時間はすべて“前さんと写真のため”に使っていました。

_えぇー-!話の展開が急すぎてついていけないですが、当時も今も“情熱的な猪突猛進タイプ”って感じですね。

森川|あまり意識してないけど、そうかもしれないです。でもね、3年くらいアシスタントをやらせてもらっていた時に、僕が交通事故に遭ってしまって。青信号を歩いていたら、2tトラックにはねられて死にかけたんですよ。

_そんな九死に一生を経験されていたんですか、、、さぞ、周りの方々も心配されたでしょう。

森川|怪我した直後は、両手両足が1mmも動かせなくて、誰かに連絡できる状態じゃなかったです。なのでちょうど前さんは仕事で出張に行っていたこともあり、後日談ですが「アイツ辞めたんやろ」って思われていたらしいです。まぁ僕は自分で何もできない状態だったし、東京で入院するよりも両親が見舞いに来やすいように実家のある大阪へ戻りました。そこでやっと前さんに経緯を話して、アシスタントも辞めて毎日リハビリをして過ごす日々を経験して。事故の影響でカメラもまともに握れなくて写真もブレブレで、もうダメかもと思ったこともありました。でね、その話を前さんにしたら「ブレブレの写真でもいいじゃん。そんな写真を撮る人いないから、それを極めればいいんだよ」って言ってもらって。それで写真家を諦めずに2年かけて本当に少しずつ少しずつ体を動かせるようになっていきました。

一度、死の淵を彷徨ったことで「今の自分は余生なんですよ。」とも語っていました。

_今の森川さんがあるのは本当に奇跡みたいなことなんですね。ちょっと感慨深くなってしまいます。少し話が変わりますが、普段は人が主役の写真を撮られているかと思うのですが、good eighty%の撮影では、人よりも“物”が主役です。難しさはありますか? 

森川|そうですね。普段は、物よりも職人さんなどの物作りをしている“人”を撮ることが多いです。でも人を撮る時に、物作りに使ってきた時間や背景みたいな、目に見えない部分を感じられる写真になるように意識して撮っていて。そういった“空気感を撮る”ということで言えば、撮るのは“物”ですが、撮りたい“コト”はあまり変わらないっていうか。でも、僕も含めてgood eighty%はみなさん同世代で、すごく熱いチームじゃないですか。そのチームの一員として「一緒に戦うぞ」みたいな気持ちでいつも撮影していて。チームの熱に応えようと、必死になれる撮影なのでいつも楽しいです。あれ、答えになってないかな?(笑)

_いえいえ、答えになっていますし嬉しいです!どんなに細かく設定をして空間を作っても、やっぱりそこはフィクションの世界なんですよね。でも森川さんの写真の中ではドキュメンタリーに見えると思っています。

森川|あーそれはめっちゃ嬉しいです!でもそこがいつもの撮影と1番違うところかもしれないです。普段は実際にあるものを撮ってきたけど、ないものをあるように撮るっていうのは、違う脳を使っている感じがしますね。

森川さんがカメラで切り取る世界は、実際に生活している一部始終を見ているかのような空気を感じます。

_最後になるのですが、good eighty%の撮影をこれまでに計3回していただきました。撮った写真は何千枚もあると思うのですが、印象に残っている1枚ってありますか?

森川|あります!この写真です(画像参照)。さっきの話に通ずるのですが、自分も含めチームのみんなでそこにないものをどうやったらあるように撮れるか、考えながら作った1枚です。何もなかったところに、人の気配を感じる空間ができあがっていて、その過程を知っているから思い入れはありますね。あと常にディスカッションしながらの撮影って、今まで経験がなかったので、その瞬間すべてを大事にして撮影したいなっていうのはありました。なのですごく思い入れがあります。

_人のいる写真を選ばれるかと思っていたので意外でした。でも話を聞くとたしかにこの1枚にはすごく熱が凝縮されているので納得です!
今日はお忙しい中、お付き合いいただきありがとうございました!

Text:Tomohiro Morooka

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